夏のはじめからずっと焦っていた。
僕が一番好きな季節であることと、これでも人の親なので子供たちに色々な経験をさせてあげたいなどと思っているから。
息子も娘も保育園に通っているので、そこから色々なことが耳に入ってくる。
「キャンプに行ってきた」、「株式会社オリエンタルランドが経営する千葉県浦安市のテーマパークにに行ってきた」、「クワガタやカブトムシを捕まえてきた」、「ザリガニを捕まえてきた」などなど。
家庭はそれぞれなのだから気にすることなどないはずなのに、どこかで気にしていた。
休みの前夜、ipadで「クワガタ 札幌」などと検索してみる自分がどこか滑稽で、ちょっと情けない。
遊園地に「仮面ライダーショー」を観に行ったりもしてみて、それはそれで楽しかったのだけれど、ちょっと無理している感じが心に残っていた。
この夏を振り返ってみて手放しに楽しかった思い出は、4人で蛍を見に行ったこと。幼いころよく家族で行った地元の原っぱで虫を追ったこと。いま僕達が暮らしている近所の公園で水遊びをしたこと。朝早く出かけた小樽の海岸でカニ探しをしたこと。
共通していることは、どこも空いていたということだけ。
もちろん賑やかだからこそ楽しいこともあって、盆踊りや神社のお祭りも良かったのだけれど、空いている場所で過ごした時間の方が家族の表情が記憶に残っている。これは多分僕の性格が原因で、周囲を必要以上に気にしてしまうから。
秋分の日、実は前夜も色々とipadで検索していたのだけれど、やっぱりこの夏良かった場所にもう一度行きたくて、小樽の海岸に決めた。
AM5:00に朝日を撮影して、色々と準備をしていたら結局出発できたのはAM8:00。焦っていない風を装っていたつもりだけれど、妻には見破られていたと思う。
期待をはるかに上回るガラガラっぷりで、この時点で僕は満足してしまった。
息子とブロックをよじのぼって、竹輪をつけた糸を垂らしてみるとカニがあちこちから集まってくる。手作りの仕掛けの割に上手くいきそうな雰囲気だったので、妻とバトンタッチ。僕は娘と流木を集めて焚火をしてみた。久々に焚火がしたかったのでライターをしっかりポケットに入れてきていた。
帰りの車中、子供たちはグッスリ寝ている。
これから迎える季節も、あれこれと欲張らずに我が家らしく過ごしていきたいと思った。